Ayato Kurokawa

参加作品

花のあと
Assistant Director
満開の桜の下で以登に声をかけたのは、羽賀道場の高弟・江口孫四郎であった。父・寺井甚左衛門に剣の手ほどきを受けた以登は、道場の二番手、三番手を破るほどの剣豪であったが、孫四郎とは未だ剣を交えたことはなかった。わずかでも孫四郎の人柄に触れた以登は、父に孫四郎との手合わせを懇願する。以登は孫四郎に竹刀を打ち込む中で胸を焦がしている自分がいることに気がつく。ただ一度の手合わせで以登が感じたものは、紛れもなく初めての恋心であったが、家が定めた許婚がいる以登は孫四郎への想いを断ち切る。その数ヵ月後、孫四郎が藩の重役・藤井勘解由の卑劣な罠にかかって自ら命を絶った。江戸から帰国した許婚・片桐才助の手を借りて事件の真相を知った以登は、孫四郎の無念を晴らすために、そして自らの淡い想い出のために剣を取るのだった。
たそがれ清兵衛
Assistant Director
幕末の庄内地方。海坂藩の御蔵役を務める井口清兵衛は、夕方に仕事を終えると同僚の酒の誘いも断り真っ直ぐ自宅に帰り、家事と内職にいそしんでいた。認知症を抱える老母と幼い2人の娘の世話、そして労咳で死んだ妻の薬代や葬儀などで嵩んだ借金を返済するためだ。日々の暮らしに追われ、次第に身なりが薄汚れていく清兵衛。同僚の中には、そんな彼を陰で「たそがれ清兵衛」と呼んで小馬鹿にする者もいた。 春、清兵衛は親友の飯沼倫之丞と再会する。倫之丞は妹の朋江が酒乱の夫・甲田豊太郎に度々暴力を振るわれるため、離縁させたことを清兵衛にうちあける。