Self
1997年、1枚のアルバムが、世界の音楽シーンに驚きと至福のセンセーションを巻き起こした。当時なんと90代のギタリストを筆頭に、かつて第一線で活躍していたキューバのベテラン歌手や音楽家たちを復活させた、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だ。アルバムタイトルは、実在した会員制の音楽クラブの名前で、そのまま彼らのバンド名にもなった。アメリカの偉大なるギタリストと称えられる、ライ・クーダーがプロデュースしたこのアルバムは、権威あるグラミー賞を受賞し、ワールド・ミュージックのジャンルとしては異例となる400万枚を売り上げた。
さらに、名匠ヴィム・ヴェンダースが彼らの音楽と人柄に惚れ込んで監督したドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が、全世界で破格のヒットを飛ばし、アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞にノミネートされる。日本でも2000年に公開され、ミニシアターの枠を超える大ヒットを成し遂げた。その熱狂は、音楽・映画にとどまらず、サルサダンスのブームやキューバレストランの流行、キューバへの直行便の就航が始まるまでの社会現象へと広がっていった。