明智光秀の謀反を題材にした『絵本太閤記』。「尼ヶ崎閑居の場」では光秀一家の悲しみと情愛をドラマティックに描いた重厚感あふれる義太夫狂言の名作で「本能寺の変」を素材にした時代物で反逆者武智(明智)光秀の家の悲劇を描く。前半、光秀の子息で討死する覚悟の十次郎を許婚の初菊、祖母の皐月、母の操は彼との別れの悲しみを堪えて初陣の戦場へ送り出す。三人の女性の悲しみと戦乱の世の無常と非情さが描き出されている。後半は反逆者光秀の登場から始まり、その家族の悲劇の結末を迎える。反逆者の古怪さが醸し出され凄味と大きさを、低い義太夫節の語りに合わせて見せる光秀の<出>が一番のみどころとなっている。