Ado Satô

参加作品

変奏曲
Juzo morii
1972年、夏のパリ。工芸品の買い付けにプラハに旅立った夫を送った杏子は、とあるカフェで森井統三と再会した。男の姿は、遠い時間を逆流させ、10数年前の彼を思い出させた。大学生の頃、学園祭で人形芝居を公演していた杏子は、警官に追われて楽屋に飛びこんで来た森井を助けた。このことが二人の結びつきのきっかけだった。その年の秋、森井は警察に追われて、突然、杏子の前から姿を消した。その森井が、今、杏子の前にいる。そして、今なお、国際的な政治組織に属し、運動を続けている。森井は杏子を自分の部屋に誘った。杏子はベッドの上で森井に寄りそった。だが、彼は危険な活動を続けているうちに神経をすり減らし、不能に陥っていた。杏子は不意に森井に対し暖かな感情をおぼえた。「この街をはなれましょう、二人だけで」杏子は少しの迷いもなく彼に囁いた。