Samurai Lord
幕末の庄内地方。海坂藩の御蔵役を務める井口清兵衛は、夕方に仕事を終えると同僚の酒の誘いも断り真っ直ぐ自宅に帰り、家事と内職にいそしんでいた。認知症を抱える老母と幼い2人の娘の世話、そして労咳で死んだ妻の薬代や葬儀などで嵩んだ借金を返済するためだ。日々の暮らしに追われ、次第に身なりが薄汚れていく清兵衛。同僚の中には、そんな彼を陰で「たそがれ清兵衛」と呼んで小馬鹿にする者もいた。 春、清兵衛は親友の飯沼倫之丞と再会する。倫之丞は妹の朋江が酒乱の夫・甲田豊太郎に度々暴力を振るわれるため、離縁させたことを清兵衛にうちあける。
のちに作られた歌舞伎十八番の『勧進帳』とは異なり、荒唐無稽でユニークな味わいの作品。
明智光秀の謀反を題材にした『絵本太閤記』。「尼ヶ崎閑居の場」では光秀一家の悲しみと情愛をドラマティックに描いた重厚感あふれる義太夫狂言の名作で「本能寺の変」を素材にした時代物で反逆者武智(明智)光秀の家の悲劇を描く。前半、光秀の子息で討死する覚悟の十次郎を許婚の初菊、祖母の皐月、母の操は彼との別れの悲しみを堪えて初陣の戦場へ送り出す。三人の女性の悲しみと戦乱の世の無常と非情さが描き出されている。後半は反逆者光秀の登場から始まり、その家族の悲劇の結末を迎える。反逆者の古怪さが醸し出され凄味と大きさを、低い義太夫節の語りに合わせて見せる光秀の<出>が一番のみどころとなっている。